月レーダサウンダー(LRS)
観測機器概要

光学観測などの通常の観測では月の表面は詳しく調べることができますが、月の地下の様子を知ることはできません。LRS観測では、比較的伝搬減衰の少ないHF帯レーダ電波を用いて、高度100kmの月周回軌道より月表層の地形や物性、また地下数kmに至る地層構造の探査を行います。

 地球周辺での惑星電波観測では、電離層や磁気圏の影響や人工電波の影響を受けてしまいますが、月周回軌道ではこれらの影響を受けず、広帯域で高感度の観測が可能となります。LRSでは10Hzより30MHzに至る周波数帯で自然プラズマ波動並びに自然電波観測を行うことにより、月周辺プラズマ環境や太陽・惑星電波放射の詳しい観測が行われます。

LRS主要諸元 / Specifications
質量 Mass 23.182kg
消費電力 Power 56.7W
サウンダー観測 / Sounder obs.
観測周波数 SDR frequency 5MHz(main freq.)
送信電力 Radiation Power 800W
パルス幅 Pulse width 200 μ sec
周波数変調 Modulation 10kHz/μ sec
探査深度 Sounding depth 5km
自然電波観測 / Natural plasma wave obs.
観測周波数 Frequency 10Hz - 30MHz
データ伝送 / Telemetry speed
高速伝送 High speed 492kbps
低速伝送 Low speed 176kbps

LRS送受信試験

つくば宇宙センター 電波試験棟
第1回:2004年12月20~22日
第2回:2006年2月27~28日
シールドルーム内でLRS-P、LRS-E、ダミーアンテナ、測定系セットアップ シールドルーム内でLRS-P、LRS-E、ダミーアンテナ、測定系セットアップ


観測の原理

 LRS観測装置からは、地下での減衰の少ない波長60mの電波をパルス状に送信します。月表面においても反射が起こりますが、一部の電波は地下に伝搬し、地下物質の変化する場所から反射が返ってきます。この反射の返ってくるタイミングを厳密に測定することで、地下の様子を見ることができます。

5MHzのサウンダー電波送受信を行うため、1本15mのアンテナを4本使用して観測します
5MHzのサウンダー電波送受信を行うため、1本15mのアンテナを4本使用して観測します


期待される成果

 下図はコンピュータシミュレーションで描かれた地下レーダ観測の例です。レーダ観測によって月表面並びに地下からのレーダエコー電波が観測されることが見て取れます。このような地下に存在する地層構造の傾きなどから、月の熱史など月のなりたちを探る重要な手がかりを得るこができます。

コンピュータシミュレーションで描かれた地下レーダ観測の例


PI紹介
LRS小野 高幸 Takayuki Ono

小野 高幸
Takayuki Ono


東北大学大学院
理学研究科地球物理学専攻
宇宙地球電磁気学分野