<第七回>
宇宙航空研究開発機構 SELENEプロジェクトチーム
開発員 米倉 克英

「かぐや」、「おきな」、「おうな」での観測はまだまだ精力的に続いています。

「かぐや」、「おきな」、「おうな」の追跡管制システムのとりまとめを担当しています米倉です。
追跡管制システムとは、臼田(長野県)内之浦(鹿児島県)にある宇宙空間観測所、増田(鹿児島県)沖縄(沖縄県)勝浦(千葉県)/パース(オーストラリア)/サンチアゴ(チリ)/マスパロマス(スペイン領カナリア諸島)の各宇宙通信所にあるパラボラアンテナを利用して「かぐや」にいろいろな動作をさせるための指令を送ったり、「かぐや」の健康管理をしたり、宇宙のどこに「かぐや」がいるかを調べたりする地上にあるシステムで、「かぐや」にとってはお医者さんであり、上司でもあります。

この追跡管制システムの仕事に携わって10数年。開発/運用予算に関する調整や追跡管制システムの構想から始まって、このシステムの設計(もの作りのための基本的な、あるいは詳細なスケジュールや機能、環境の計画を立てること)、開発(実際のもの作り)、試験(作ったものがうまく動くかどうかの確認)、運用(実際に地上から「かぐや」を動かす)までの一連の作業を行ってきました。設計、開発、システム構築作業では、JAXAに統合される前の旧宇宙科学研究所での科学衛星運用システムと、旧宇宙開発事業団での静止衛星、地球観測衛星等の運用システムのそれぞれの文化、技術、知識をうまく融合することに精力を注ぎ、いろいろな困難な問題もありましたが、経験あふれる先生方、技術屋さん、開発メーカの方々の温かい支援を頂いて何とか乗り越えることができ、「かぐや」、「おきな」、「おうな」にとって重要な地上システムを作り上げることができました。
この追跡管制システムが主体となって「かぐや」を無事に月に投入することができ、そして「おきな」、「おうな」を問題なく分離することができたときは、感激もひとしおでした。

またその他に、「かぐや」、「おきな」、「おうな」は神奈川県相模原市にあるJAXA相模原キャンパスのなかの「SELENEミッション運用解析センター」というところで、たくさん人々が携わって「かぐや」、「おきな」、「おうな」の運用や運用で取得できたデータが加工/解析処理されていきますが、このセンターの現場管理(設備管理、セキュリティ管理)も2006年から担当しています。

センターの中は、限られたスペースのなかで各分野の担当の人々が作業しやすいよう計算機や作業机、棚等を配置していますが、打ち上げ前の準備段階や打ち上げた後の運用段階に応じて、作業する大勢の人々からの様々な要求に応えて数度のレイアウト変更、運用のため補助機器の増設や、時には施設の屋根裏に入ってのケーブル敷設作業など、裏方的な作業に奔走していることもありましたが、それも今では一瞬のうちに駆け抜けていった良い経験と思い出です。

これからも、「かぐや」、「おきな」、「おうな」の追跡管制システムやSELENEミッション運用解析センターは、常に衛星自身を支え、そしていろいろな成果をあげていく助けとして機能していきます。

2008年5月